ふたつの羽根


その棚に置かれているのは蝶が描かれたコップと、さっき陸に買ったZippoと同じ羽根が描かれたコップだった。 


大空に舞う蝶と薄い水色のコップに白い羽根が2枚、描かれていた。 


可愛い…


そのコップを手に取って眺めている時だった。


「里奈っ…」


自分の名前を呼ばれパッと横を振り向く。


そこには顔をしかめる陸の姿が目に入り、あたしは手に持っていたコップを元の位置に戻す。


「あっ、陸」

「遅ぇから心配すんだろ」 

「ごめんね」

「行こ」


陸はあたしの右手をギュッと握り止めていた足を進ませる。 


やっぱし陸の手はいつでも温かい。 

あっ、そうだ…


「陸、買ったの?」

「あぁ」


陸は反対の手に下げている袋を上にあげる。