その生徒手帳の中には小さい時のあたしとパパが写っていた写真を入れていたから。
大切なたった一枚の写真だから無くしたくなかった。
だけど、その次の日、学校に行くと淋しそうに“ポン”と机の上を置かれていた。
誰が置いてくれたのも分からなかったけど、それ以来、手帳は持ち歩かなくなった。
「あの時、ぶつかった人って陸だったの?」
「そう俺。初めの里奈の印象は“何だこの女”だった」
懐かしそうに話す陸はフッと笑い、あたしが手にしている小さな額を奪い取り、それを眺めながら話を続ける。
「すっげぇムカツクって思ってたけど、その時の里奈は目に涙浮かべてた。その潤んだ目で俺の事すげぇ睨んで走って行って、そこに残されたのが手帳だった。とりあえず手に取って中見た時、その父親の顔に絶句した」
「どー言う事?」



