ふたつの羽根


「その前に1回会ってる。生徒手帳、落とした時の事、覚えてる?」 


生徒手帳…


確かあれは1年の冬だった。 

放課後アイツの事で無性に腹が立って階段を掛け降りる途中だった。 


その時、階段を上ってくる誰かとぶつかって、また苛立ったあたしは怒りをぶつけたんだ。


“ちょっと!前みなよ”


勢いよく怒りをぶつけて、そのぶつかった張本人を見下ろすと、とてつもなく冷たい目であたしを睨み付ける一人の男だった。


“あ?それはお前だろ” 


その初めて見る冷たい目付きに、あたしの体は硬直しそうだった。


そしてその日、家に帰ると、いつも持ち歩いていた手帳がなく探しても探しても見つからなかった。