「あっ、うん」
あたしの隣にあったテレビ台に手を伸ばした瞬間、ふと目についたのは灰皿ではなく、その奥にある四角いものだった。
しばらくの間、身動きしないあたしに「りーな灰皿。灰落ちるって」と陸からもう一度、声が掛かる。
ハッと我に返り、奥に伸ばしていた手を引っ込め手前にある灰皿を取り陸の目の前に置く。
「サンキュ」
灰皿にタバコをトントンと打ち付ける陸を見て、もう一度あたしはテレビ台に目を向ける。
「何でここに…」
思わず出てしまった小さな声に陸は「手にしていいよ」と口を開く。
再度、陸を見ると陸はタバコをくわえたまま頷いた。
そして、あたしは陸に言われたままそこに腕を伸ばし手に取る。



