「いたっ」
頬に鋭い痛みが走ったと思うと有亜が横からあたしの頬を抓っていた。
「里奈ボーっとしすぎ」
横から覗いてきた顔は、さっきとは全然違う微笑んだ顔だった。
“もう19時だよ”
決して“もう”と言った時間じゃない事ぐらい言ってきた有亜だって分かっているはず。
ここに居たら純也を見るから言ってきてるって事だって、あたしにも分かる。
それが有亜の優しさ。
ザワザワと賑う交差点を一通り見て、あたしはフッと息を吐く。
「帰ろっか」
あたしは立ち上がり手でスカートをパンパンと叩き鞄を手にした。
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