「お肉、あーんしてくれない?手使えなくて」
浜田くんは砂まみれの手のひらを見せながらそう言った。
「さっき海から上がった瞬間に尾崎が突進してきてさ〜盛大に倒れたよね〜」
ヘラヘラと笑う浜田くんだけど、私は固まったまま動けない。
だって、今、『あーんして』って。
いくら手が砂まみれで使えないからって、そんなお願い私にするの?!
どうしたらいいんだろう!!
冗談、かな。いやでも実際浜田くんの手はご飯を食べられそうな状態ではないし……。
「えっと、」
っ?!
「さっさと洗ってくればいいでしょ」
突然、身体が後ろに引き寄せられたかと思うと、耳元に安心する声が響いた。
「え、なになに。寧衣ヤキモチ?」
「そういうんじゃなくて。浅海さんこういうの慣れてねーの。困ってんの見たらわかるだろ」
そしていつもより少し低い気がする声と、強い口調。
この間、尾崎くんに対してあたりが強かった時と同じ空気感をまとっている。



