「たしかにそういう経験したら、人と関わるのが、信じるのが、怖くなっちゃうよね」

「……うん。ごめんね。だから、」

「ゆっくりでいい」

「へ……」

『だから、私にはもう無理だと思う』

そう言おうとしたセリフに被せた寧衣くんの言葉に固まってしまう。

「ゆっくりでいいから、みんなと過ごしてみて欲しい。とっても勇気のいる一歩だってことはわかってる。それでもしダメならまた一緒に方法を考えよう。今大事なのは、浅海さんがみんなとどうなりたいと思っているか」

「……っ、」

何を言っても、寧衣くんは私を暗闇から連れ出そうとしてくれる。

私が何度転んでも、その温かい手を差し伸べてくれると、信じたくなる。

「大丈夫だから」

不思議だ。

心の中で自分にどんなに言い聞かせても効果のなかった『大丈夫』は、

寧衣くんの口から発せられると全然違うものになってしまうんだから。

頑張ってみたい、ここから変わってみたい、そう思えちゃうから。

「……うんっ、ありがとう」

私がそう返事をすると、寧衣くんは嬉しそうにフワッと笑った。