「和子、春園に知り合いいるの?」
と羽芽ちゃん。
ほかの子たちも彼の名前を聞いてもポカンとしている。
「いや、一方的に知ってるだけ。バスケ部の中で有名だったの。春園にめっちゃバスケ上手いイケメンがいるって」
「へー。姫茉、話したことある?」
羽芽ちゃんの声が少し遠く感じて。
ドキンドキンドキン。
どうしよう。
動悸がおさまらない。
「……姫茉?」
「……あ、ごめんっ、私、ちょっとトイレっ」
その場にいるのが苦しくなって、思わず立ち上がれば、
口がそう勝手に動いていて。
「え、ちょ、姫茉────」
羽芽ちゃんの声を無視して、私は廊下へと飛び出した。
「……っ、」
全然ダメだ。
やっぱり私はみんなみたいになれない。
羽芽ちゃんたちが中学の頃の子たちと違うのはわかっているのに。
当たり前のように話される中学の思い出が、私にはできなくて───。
泣くのを堪えながら、廊下の先の角を曲がってしゃがみ込んだ。
ごめんなさい、寧衣くん。羽芽ちゃん。
私はあなたたちみたいにはなれないよ。
やっぱり世界が違うんだ。
私は、今まで通りひとりぼっちでいた方が──。



