「悪いんだけどシャーペン貸してくれないかな?忘れちゃってさ」
「え、あ、……は、はいっ」
すぐに小さく返事をしてペンケースから取り出したシャーペン。
彼に差し出してからそのキュートなデザインに気がついてしまった。
男の子が持ちやすいシンプルなデザインのだってペンケースに入っていたはずなのに。
よりによってノック部分にクマのマスコットがついたものを選んでしまうなんて。
「あ、えっと、ごめんなさい、別のものを……」
「なんで?全然いいよこれで。助かったありがとう」
「あ……はい、いえ、」
そう答えて机に向き直ったけど。
どうしよう。
絶対、チョイス間違えてしまったよね。
初めて声をかけられてまだ心臓のバクバクが止まらない。
だって、人気者の、私が普通に生活しているだけじゃ絶対に話すことのないような男の子に声をかけられたんだから無理もない。



