フッと空気が動いたかと思えば、耳元に彼の顔が近づいてきて、

今まで以上に寧衣くんの香りがハッキリと香った。

「浅海さんがこの姿でどうしても教室に行きたくないっていうんなら……」

っ?!

耳に寧衣くんの低い声と甘い吐息がかかってくすぐったい。

「ここでふたりでサボっちゃう?」

そう言って顔を離した彼が、横目で空き教室を見た。

初めて見る、寧衣くんの、ちょっと悪いことを企んでるような顔。

「ダ、ダメだよ!寧衣くんは賢いから多少サボっても影響ないのかもしれないけど、私はただでさえ必死なのに……サボりなんて、」

「……そっち?」

「え?」

「いや、もっと心配することあるのになーって」

ん??

授業をサボって勉強が遅れてしまう以外に、何を心配するって言うんだ。

「……浅海さんは女の子で、俺は男だよ」

「知ってるよ」

そりゃ美少年の寧衣くんのことだ、女の子みたいなくりくりおめめで、

かわいいって言葉もよく似合う顔つきだけど。

彼が男の子なのは当然知っている。