恐る恐る、違和感を感じる前髪部分に触れれば。
髪に何かがついていた。
「寧衣くん……これって、」
髪にあるそれを触ったまま彼を見上げれば、私の正面に、スマホ画面が現れた。
インカメラの設定になっていたそこには私が映っていて。
でも、いつもの私と違うのは、前髪が横に分けられていているということ。
おでこが空気に触れて涼しい感覚。
前髪を留めているのは可愛らしいヘアピン。
ピンの先端には淡い黄色の花びらが控えめに付いていて。
この花……。
「ひまわり」
そう言った寧衣くんを見ればすごく優しい表情をしてこっちを見ていて。
「昨日のバイト帰りに寄ったお店で見つけたの。すぐに浅海さんの顔が浮かんだよ。ぜったい浅海さんに似合う!って。ほら、それに浅海さんの下の名前『ひま』だし」
「っ、」
ずるい。
ずるすぎるよ。こんなの。
自分のいないところで、誰かが自分のことを思い出してくれる。
そんなの嬉しくなっちゃうに決まってる。



