迷いながら恐る恐る顔をわずかに後ろに向けると、

前髪の隙間から見えた彼の顔が、パァッと明るくなった。

クラスメイトの最上 寧衣(もがみ ねい)くん。

もともと色素の薄いベージュのサラサラヘアに、くりくりの大きくて綺麗な瞳。

すっと通った鼻筋に小さな顔。

そのルックスの良さから女の子には大人気の男の子だ。

素敵なのは見た目だけじゃなくて。

去年の入学式の新入生代表挨拶も彼だったから、きっと成績もものすごくいいんだと思う。

そんな彼が授業中、どうしてこんな私に声をかけてきたんだろうか。

今までに、学校の人気者と話すなんてことなかったから緊張がMAXになる。

「やっと気付いてくれた。浅海さんすっごい集中しててえらいね」

「え、あ、いや……」

『えらいね』
そうやって人に褒め言葉をかけてもらえたのはいつぶりだろうか。

しかも全然褒められることじゃないのに。