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「浅海さん、ちょっとこっち」
昇降口で上履きに履き替えて、寧衣くんと並んで教室に向かう階段を上ろうとしたら、
突然、手を取られた。
「へ、ちょ、」
寧衣くんの足は階段には上らず、その横の廊下へと進んでいた。
今は使われていない物置きになっている空き教室と相談室、その廊下にはそれらのドアがある程度で、
人通りはないに等しい。
少し歩いた寧衣くんの足がぴたりと止まって、身体がこちらを向いた。
こんなところで立ち止まって、突然どうしたんだろうか。
「あの、寧衣くん、教室に、」
「浅海さんに渡したいって言ったもの、今渡していいかな」
「えっ、あ、うん、」
寧衣くんが私に渡したいもの、一体なんなのか全然検討がつかないけど。
「よかった。じゃ、ちょっと目、つぶって」
「へっ?!」
何を言い出すかと思えば。
目をつぶってって……。
「大丈夫!一瞬だけ!」
「……っ、」
そんなこと言われても、寧衣くんの前で目を閉じるなんて、恥ずかしいよ。



