え……。
井手上さん?

なんで彼女が私に話しかけて……。

しかも、私の聞き間違いじゃなければ今「浅海ちゃん」って言ったよね。

「ごめんね、昨日。昴が変なこと言っちゃって。こいつ日本語勉強中だからさー。まじで悪気はないの」

「へ、あ、えっと……」

何か返事をしなきゃと声を出したら「はぁー?」という尾崎くんの声にかき消された。

「去年の成績表、俺より悪かったくせによく言うよ」

「あーん?一昨日までペガサスは実在するって本気で思ってた人に言われたくないんだけど?」

突然目の前で繰り広げられるやり取りに呆気に取られていると、「ちょっとふたりとも」
と言う穏やかな声が真横から降ってきた。

……寧衣くんだ。

ドキンと大きく胸が鳴る。