なんでよく知りもしない女の子に作り笑顔向けなきゃいけないの……。

これが接客業の宿命なのか。

毎日顔を合わせる学校の女の子たちならまだしも。

いくらお客さんとはいえ、見知らぬ店員に対してこういうことふざけて言ってくる人ってなんなんだろうか。

理解しがたい。

でも、前に店長に、

『最上くんが来て若い女の子のお客さん増えてきてね〜頼んだよ〜』

なんて言われたから余計に、

これで変にクレームとかこられても困るし。

彼女たちに嫌な思いさせるわけないし。
相手は一応、お客さまなわけだし。
お金のため。

だから。

俺を笑顔にしたいなら、今すぐ姫茉を連れてきて、なんて心の声はうんと押し殺して。

「ご来店、ありがとうございますっ」

何十回やったかわからない渾身の作り笑顔を向ければ。

「きゃーー!」

なんて黄色い声が店内に響いた。

ハハッ。頼むから、もう来ないでよ。