どきんどきん、と自分の心臓の音がうるさくてしょうがない。
ゆっくりと彼女の下唇を親指でなぞって、姫茉の体が少し、ピクッと反応した。
今度こそ。
そう思った時だった。
ガチャッ
!?
「朱耶ったら、私の顔も見ないでそそくさと行っちゃうんだもの。まったく。ご飯食べていけばいいのに。もう。ただいまー、ん?あれ?お客さん、来てる?靴が……小さい。え、女の子?!」
「ちょ、母さん、女の子ならあんまり騒がない方が……」
はぁ……。
もう、話し声とっくに丸聞こえなんですけどね。
こんなことってある。
部屋の外から聞こえる両親の声に、頭を抱えた。
なんなの。
今日、この家族のタイミングおかしいでしょ。
最悪。
「まじ……ほんっとごめん、姫茉……」
いちばん落ち着ける、ふたりの時間をゆっくり過ごせる場所だと思ってわざわざ来てもらったのに。
こんなんじゃ、いちばん休まらないじゃないか。
主に俺が。



