全然落ち着かないまま、15分がたった時だった。

「浅海さんっ!」

大好きな声が、私の名前を思い切り呼んだ声が聞こえて。

顔を上げた瞬間。

ギュッと、正面から全身がひだまりに包まれた。

うぇっ?!

これは、もしや、抱きしめられてる!?

「ね、寧衣くん……、あの、」

「一生のお願い。少しの間、このままで我慢して」

我慢って……。

好きな人に抱きしめられて、こんな幸せなことってないのに。

「アイツに、何にもされてない?」

っ?!

寧衣くんの言葉に、さっきまで酒井くんといたことを思い出して、

変に身体に力が入る。

押し倒されて、手首を強く掴まれて。
触れられた肌が冷たくなって。

一気に、脳裏にあの場面が蘇る。

「……う、うん。大丈夫」

「なに、その声。絶対なんかあったじゃん」

そう言った寧衣くんの、私を抱きしめる力が強くなる。