「この状況で浅海に謝られたらそれこそ死ぬだろ。無理本当……はぁーーーー」

酒井くんは大きくて長いため息をついてから、ウーロン茶をグビグビ飲んだ。

ガラスが溶けた氷だけになってしまってる。

そして、今の酒井くんは、元通りの、私の知っている酒井くんの顔だ。

「……ごめん、浅海。先帰って」

「えっ」

「……頼むから」

「あの、」

「好きだった子に、泣いてる顔見られたくねぇーのー、言わせんなよーほんっとそういうところ鈍感なーー」

「はっ、あ、ごめ、あっ、うん……じゃあ、またね、」

ガチャ

バタンッ

いろんなことをぐるぐる頭の中で考えてどうしようかと思ったけれど、酒井くんがものすごく必死に言うから。

急いで荷物を持って部屋を出た。

大丈夫かな、酒井くん……。

酒井くんに何かがあったのか、すごく気になるし心配だけれど、

これ以上踏み込むのは、私の役目じゃないから。

そう自分に言い聞かせながら、カラオケ店を後にした。