「恋愛対象として、は、難しいけど、でも、酒井くんといて楽しかったのは本当で。だから、私の大切な友達のひとりです」
「……あそう」
空気を吐くように、酒井くんがつぶやいて続けた。
「ごめんね。責めるみたいな言い方して。浅海が、そういうやつなのはわかってるのに。だからこそ好きになったのに。俺じゃダメって正面から言われると、かっこつけられなくなって」
「酒井くん……」
「……うん。友達、友達でいる」
酒井くんは、まるで自分に言い聞かせるみたいにそう言って、私に左手を差し出して来た。
「友情の印」
「あっ、」
よかった。
わかってくれたみたいだ。
ホッと胸を撫で下ろして、同じように左手を差し出す。
酒井くんの手が、優しく私の手を握って。
元どおり、そう安心して微笑んだ瞬間だった。
握っていた手が離れて、気付いたら私はソファに押し倒されていた。
友情の印を誓ったはずの彼のその手は、今、私の手首を強く固定している。
……なに、これ。



