「俺はさ───」
「さ、酒井くん、私ちょっと、」
急に緊張感が漂ってしまった空気に耐えられなくなって、思わず声を出しながら座っていたソファーから立ち上がったけど。
「聞いて」
手首を掴まれた。
なんで。
酒井くんは、私が今誰のことを一番考えているのか知っているはずなのに。
これじゃ、まるで───。
「……逃げないで」
苦しそうな酒井くんの声が耳に届いて、静かに座り直す。
逃げ……私は今、酒井くんから逃げようとした?なんで?
「俺は中学のころ、浅海のこと好きだったよ」
「……っ、」
目の奥が痛い。
喉が何かに塞がれてるみたいに息がしづらくて。
誰かに、しかもあのみんなの憧れの的だった酒井くんに、好きだったって言ってもらえて、
冗談でも、夢みたいな、ありがたいことなはずなのに、嬉しいって気持ちよりもずっと、苦しさでいっぱいで。



