「落ち着く……ね、」
酒井くんが何か呟いたけれど、流れるBGMにかき消されてしまった。
「なに?酒井くん」
「ううん。これ、浅海食べて」
突然目の前に寄せられたフォンダンショコラが乗ったお皿。
「え?いや、これ酒井くんの……」
「違うよ。浅海の」
「へ」
「俺だけ食べてるの変だし。それとも何か歌ってくれる?」
「歌?!無理ですっ」
人前で歌うなんて中学の合唱コンクール以外したことないからできないよ。
「ふっ、言うと思った。これめっちゃうまいから。あ、チョコ苦手だった?」
顔を覗き込まれるように聞かれて、フルフルと首を横に振る。
チョコとかケーキとか、大好きだ。
「じゃ、これ食べてねー」
「う、なんかすみません……」
「なんでだよ。俺が誘ったんだし。これぐらいさせて」
なんかすごい、大人になったんだな。
酒井くん。
いや、同い年だし、もともと気遣いのできる人だったし、何を思っているんだ私って感じだけど。
あの頃よりもさらに魅力的になったのは、見た目だけじゃないんだってわかる。



