酒井くん、まだ来てないみたい。
ザッと公園を見渡しても、小さな子供たちが走り回って遊んでいる様子が見えるだけで酒井くんらしい人は見つからない。
待ち合わせ時間の5分前。
遊具から離れたベンチに腰を下ろして彼を待っていると、
正面に立つ大きなすべり台から誰かがこちらに向かってくるのが見えた。
ん?
「浅海っ!」
「え、さ、酒井くん?!」
駆け寄ってきた高身長の彼を見て、思わず大きな声で名前を呼んでしまった。
遠目だと、全然わからなかった。
だってなんか、体育祭の時に比べてすっごくおしゃれな格好をしている気がするし、
髪型だって、久しぶりに会った日と違って前髪をかき上げていて。
爽やかな好青年感がグッと増しているから。