でも、ずっと前に、自分でなんとかするから寧衣は何もしないで、気を遣わないで、と言われたから。
また、大きなお世話と思われるかもと思うと気が引けるし。
どうすれば正解か、何を言えば、羽芽の気持ちを少しでも軽くしてあげられるのか。
まだ何を言うかも決まっていないのに空気を吸って吐こうとしたら、
羽芽の声が、重なった。
「……寧衣、ごめん」
「なにが、」
今まで彼女の口から聞いたことのない、絞り出したような苦しそうな声。
ちょっと震えてるようにも感じて、俺にまで緊張が伝わってきた。
「……前に、朱耶さんとのこと、何もしないでって何度も言った分際でこんなことお願いするの、まじでどうかと思うんだけどさ、」
「うん」
羽芽がものすごくしっかり者で、誰よりも強がりなことわかっているから。
これから言われることをなんとなく予想できて、目の奥が少しだけ痛くなった。