「私だって悔しいのっ……なんでこんなタイミングで。寧衣がやっと姫茉と話そうとしていたのに。なんなのよ酒井隆一っ、あの男さえいなければっ」
「羽芽……」
自分の気持ちとしっかり向き合ってそれを浅海さんに伝えようとした、
その事実を羽芽がちゃんとわかってくれていたんだというのを今改めて知れただけで、
さっきよりも心はずいぶんと穏やかになれた気がする。
はぁと大きなため息をついた羽芽が、「でもさ、」とふたたび口を開いた。
「……過去の『もし』なんてないよ。未来の『もし』はいくらでもあるけど」
「え?」
顔を上げた羽芽とバチッと視線が交わって。
彼女のその瞳が、あまりにも力強い。
「起きなかった過去のことをどんなに考えたって意味ないよ。過ぎたことは変えられないんだから。寧衣と姫茉の『今』とこれからを考えてよ」
「……っ、」
俺と、浅海さんの今とこれから……。



