「バカなの」

「……わざわざ掃除サボって暴言吐きに来たわけ?」

「サボってない!ちゃんとゴミ捨て行った帰りにこっちにきたの」

「……そう」

清掃時間。

体育館の2階ギャラリーの床をモップで拭き掃除していたら、

目の前に羽芽が仁王立ちしていた。

なんだって言うんだ。

普段は教室の掃除担当だけど、クラスメイトのやつに頼んで交代してもらった。

それなのに。

一番見つかりたくない人に見つかってしまった。

「寧衣、酒井隆一が来た時、姫茉に『よかったね』って言ったんだって?」

「……、べつに」

モップの棒の先端に両手を置いてそこにあごを乗せたまま目を逸らす。

「は、なにむくれてるわけ。言ったの?言ってないの?」

「言ったけど、べつに羽芽に関係ねぇ……ないと、思い、ます」

チラッと彼女の顔を見たらあまりにも鬼の形相だったので、語尾が小さくなる。