「姫茉の気持ちが固いのはものすっごくわかるんだけど、うちらが心配してるのはもう一つあるんだよね」

和子ちゃんが私の前の席に座って、私の机に頬杖をついた。

「心配?」

「酒井隆一が、姫茉に気があるんじゃないかってこと」

と陽香ちゃん。

「あっ、それはないよ!全然!本人にしっかり、友達としてって言われたし」

「いやけど、下心なくて、連絡先のためだけに片付け終わるまで待つとかある?」

「怪しいな」

和子ちゃんのセリフに、羽芽ちゃんもウンウンと激しく頷く。

「や、あの、連絡先も……」

あの後、『これからよろしくね』というメッセージのやりとりを始めてから、

酒井くんに言われたのだ。

『実は、浅海に返したいものがあってさ』

「え、返したいもの?」

「うん。それからちょくちょくやりとりしてるんだけど。酒井くん、部活忙しいみたいでなかなか都合つかないから、もしお互いに時間合う日があれば、その時にでもって」

「じゃあ、連絡先を知りたがってたのも、それを返すためってこと?」

陽香ちゃんの問いにコクンと頷く。