「あのヤロウ……ちょっと、寧衣と話してくるっ!」

「あっ、ちょ、羽芽ちゃんっ、大丈夫だからっ」

教室を出ようとした羽芽ちゃんの腕を掴む。

「でもっ、」

「羽芽ちゃんたちには助けてもらってばっかりだから。さすがにもう今回は自分の力でなんとかしたい」

「姫茉……」

あのとき、酒井くんの誘いを強引に断ってでも、ちゃんと寧衣くんと話すべきだった、そんな気がする。

私は寧衣くんといたいよ、
どうして頬にキスしたの、
なんて言いかけたのか、
よかったね、ってどういう意味?

だけど今の自分には、善意であんな風に言ってくれた寧衣くんにしつこく迫る勇気もなくて。

変わってきてるように見えて、本来自分の中にある性格って、なかなか変わらないものだ。

いつまで経っても臆病。
それでも、どこかで少しでも変えていかなくちゃ。

そんな意識は絶対なくしたくない。