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「……ね、寧衣くんっ!」
教室のある3階から2階に降りる階段の踊り場で。
あまりにも彼がズンズンと歩くもんだから、そのスピードに少しだけ怖くなって声をかければ、
すぐにピタッと足が止まって、掴まれていた手首が解かれた。
「……あっ、ごめん。勝手なことして」
「ううん。その、ちょっとびっくりしたっていうか。さっきの寧衣くん様子いつもと違う気がしたから」
「……ごめん。昴の言い方にムカついて。かなり感じ悪かったよね、俺」
「尾崎くんの言い方?」
「……浅海さんのことあんな風に言うから」
そう言われて、さっきの尾崎くんの言葉を思い出す。
『女の子の趣味変わった?地味系に目覚めたか!』
「あぁ……」
「あぁ……って。ムカつくでしょあんな風に言われたら」
常に穏やかで笑顔を絶やさないのが寧衣くんのイメージだったからなんだか意外で圧倒されてしまう。



