ちゃんと終わって話すって決めたのに。
全然、止められそうにない。

「浅海さん、俺───」

「……あれ、浅海?」

浅海さんへの気持ちをちゃんと言葉にしようと、声を出した瞬間。

背後から、男の声がした。
そして、確かにその声は、彼女の名前を呼んだ。

嫌な予感がした。
ものすごく。

後ろを振り返りたくない。
……のに。

目の前の彼女は、もうすでに俺から目線を外していて、俺の背後を見ていた。

「……っ、さ、酒井くん?」

これ以上、俺以外の男の名前を。
その可愛い声で呼んで呼んでほしくなかったよ。

酒井。

聞いたことあると思って記憶を辿れば、秒で思い出した。

『酒井隆一くん』

浅海さんが中学の頃一緒のクラスだったって言う……。

最悪だ。