「そんなに木野が心配?」

「へっ、そりゃ──」

動く浅海さんの唇に、親指の腹で触れれば、驚いた表情をした浅海さんの頬がすぐに赤くなる。

「っ、あの、」

「転んだとき、当たってたよね。浅海さんの口に……」

「えっ……あ、う、ううん!あれは、木野くんの口が頬に当たっただけで。全然大丈っ───」

ムカつく。
何が全然大丈夫なんだ。

木野木野って。
目の前に俺がいるのに、あいつの名前ばっか。

気付いた時には身体が勝手に動いていて。

ものすごく近くで彼女の香りを感じながら、浅海さんの口元ギリギリに、自分の唇を押し当てた。

「っ……?!」

俺だけを、見てよ。

「ね、寧衣……くん、なにして……」

「浅海さんが大丈夫でも、俺が全然大丈夫じゃないから」

「っひ、」

浅海さんの首に手を回してうなじの方に軽く触れれば、かわいい声を漏らす。

「ここも。浅海さんのいつも隠れてるとこ、ほかのやつらにも見られるって、ヤダ」

「……っ、」

多分、今の俺の顔も、赤くなってる。
さっきから暑くてしょうがない。

ここまでして、それでもわかんないとか、言わないでよ。

ちゃんと言わない俺が一番ずるいのはわかっているけれど。

頼むから、もっとたくさん、意識してよ。