「ここでまさかの!先ほど圧倒的なごぼう抜きを見せてくれた最上寧衣くんが、ゴールした浅海姫茉さんをお姫さま抱っこ?!なんでしょうかこの展開は!」

なんてことだ。
ものすっっっごく。

は、恥ずかしいよ……。

放送委員の人もあからさまにニヤついた声で煽る。

会場中から、女の子たちの黄色い声や、男の子たちの冷やかすような声が聞こえて。

顔中に熱が集まって思わずうつむく。

「あの、寧衣くん、私は大丈夫だからっ。その、この体勢はちょっと……」

「大丈夫じゃない。怪我してる」

「た、大したことないから」

心配してくれてるんだっていうのはすっごくすっごく嬉しいけれど。

この状態はさすがに、色々とまずいよ。

「大丈夫かどうか、それを決めるのは浅海さんじゃない。ちゃんと保健室行くよ」

「っ、」

寧衣くんってば、こんなたくさんの人たちが見ているところでお姫様抱っこなんて。

怪我よりもうんと心臓の方がジンジンして痛いぐらいだよ。

「は、恥ずかしい、ので、」

「うん。恥ずかしい思いすればいいよ。無理した罰」

「……っ、」

そ、そんな。

私のことを一度も見ないまま、真っ直ぐ保健室のある校舎へ歩く寧衣くんに、何も言い返すことができない。

だって……。

みんなに見られて恥ずかしいってことよりも、寧衣くんにときめいてドキドキしてる気持ちの方が大きいんだもん。

自分の大きくなっていく気持ちに我慢できなくて、寧衣くんの体操着をギュッと握った。