「そんな簡単に言わないでくれる?寧衣とはぜんっぜん違うから。私は、乗り越えなきゃいけない課題が多すぎるの。そんな無謀なことしないよ。当たって砕ける勇気ないし」

「別に砕けるって決まったわけじゃ……」

「私のことはいいから」

羽芽はそう言って俺の背中を強めに叩いてから「早く戻らないと」とグラウンドに向かって歩き出した。

『別に、寧衣に打ち明けたからって取り持って欲しいとかそういうつもりじゃないからね。私は私の力だけでやるから』

中3の時、羽芽から、俺の兄である最上朱耶を好きだって打ち明けられて。

『寧衣に気持ち黙ったまま朱耶くんに近づこうとしてるの、寧衣を利用してるみたいで嫌でさ』

そんな風に言われてから、羽芽と兄ちゃんのこともどうしていいかわからない。

本人は自分の力でなんとかするって言ってるけど、

兄ちゃんは今大学生で基本的にはうちを出て一人暮らしをしているし。

友達として、羽芽の恋愛も応援してあげたいのは山々だけど、

どうすれば正解なのかわからなくて。

自分のことでも最近余裕がなくなってきているのに、羽芽のああいう顔を見るとなんとかしてあげたくて。

パンク寸前の頭をガシガシとかきながら、羽芽の少し後に続いて、グラウンドへと戻った。