「ずるいも何も、事実───」

「わかったから!な!木野、もういいから。絶対優勝して、学食無料券ゲットしような!」

席から立ち上がった寧衣くんが、なだめるように木野くんの肩を掴むと、

木野くんが「助かる」と呟いた。

これで、ひとまず解決ってことでいいのかな。

寧衣くんの機嫌もなんだか治ってるみたいだし。

「ごめんね、浅海さん。行こっか」

「うん!」

爽やかで太陽みたいな男の子、初めは寧衣くんのことをそう思っていたけれど。

最近はちょっと違う。

いろんな顔の寧衣くんを見ることができている。

でも、そのどれも、新しい寧衣くんを見つけるたびに、やっぱり好きだと思うばかりだから。

3人でグラウンドに向かおうと教室を出て。

何やら寧衣くんと木野くんがボソボソと話していたけど、

ふたりの後ろを歩く私の方からはよく聞こえなくて。


「で、寧衣はなんでアンカーになりたかったの」

「……木野、嘘だろ」


とりあえず、ふたりが仲直り(?)できて、よかった。

そう、さっきよりもスッキリした気持ちで廊下を歩いた。