あの時も、おじゃましたお家でも、寧衣くんは一体どういうつもりで……。

ベッド脇に置いていた、前に寧衣くんがクレーンゲームで取ったクマのぬいぐるみ。

それに手を伸ばして、ジッと見つめながら、あの日寧衣くんに言われたことを思い出す。

『浅海さんもそれ俺だと思って話しかけてよ』

「……寧衣くん、」

シーンとした部屋に自分の声だけが響く。

あそこでもし、寧衣くんと見つめ合ったままだったらどうなっていたんだろう……。

そんなことばかり考えてしまって。

いや……本当にクマに話しかけちゃうなんて、私ったら重症だ。

ジッと私のことを見つめていた寧衣くんの綺麗な瞳が頭から離れない。

血色のいい形の綺麗な唇。

彼との距離がグッと縮まって、触れられて、脳内で今日一日ドキドキした瞬間が再生される。

そして、持っていたクマのぬいぐるみの口元に自分の唇を当てた。

「……っ!!」

って!!

何してんの!!私のバカ!!変態!!

「……はぁ、」

思ったよりも、重症なのかもしれない。

「私、寧衣くんのこと──」

この気持ちはまだ、たとえひとりきりの部屋でも、口に出す勇気なんてなくて。

代わりに、クマのぬいぐるみをギュと抱きしめた。