あの後、寧衣くんはいつも通りの寧衣くんで。

まるで、寧衣くんにソファで押し倒されたあれは私の夢だったんじゃないかと思うほど。

でも……。

自室のベッドに寝転がりながら、自分の肩を抱いて全身を包み込む。

寧衣くんに触れられたのをこの体がよく覚えている。

触れた熱も、感触も。

夢なんかじゃ、ない。

それに、今日の寧衣くんはいつもより少し様子が変だった。

お家におじゃまする前の水族館でも───。

深海魚コーナーで水槽の中を覗いて魚に夢中になっていたとき。

『…浅海さんの方が、かわいいよ』

『気付いてる?今、この中で俺たちふたりだけなの』

あんなこと言われちゃったら、どんなにそんなわけないと思っても意識してしまう。

あの瞬間、寧衣くんの顔が近づいてきて。


……キス、されちゃうのかと思っちゃった。