「……浅海さんがあの子たちに想いを伝えたの、すっごく偉かったなって思う。でも、さっき肩に触った時、震えてたから」

「えっ、」

うそ。
自分では全然気が付かなかった。

違う。
気付かない、ふりをしていたんだ。

「我慢しないで。今はいっぱい泣いていいよ」

寧衣くんの落ち着いた声がリビングに響いて、彼の温かい手が私の頭に乗る。

その優しさが心に染みて目頭が熱くなって。
視界が滲む。

寧衣くんが来てくれたあの瞬間、ホッとして身体全身の力が抜けた。

一歩踏み出そう、そう思えたのは紛れもなく寧衣くんの言葉のおかげだけど、

だからといって私のすべてが強くなったわけじゃない。

今まで選択肢になかった『勇気を出す』という選択が、私の中に新しくできただけで、

それを行動に移すことが怖くなくなったわけではない。

寧衣くんに迷惑をかけちゃいけないって、無意識に自分の『怖かった』って感情を見て見ぬふりして忘れようとしてたんだ。