「うちの可愛い彼女になんかよう?」

「え、」

ふわっと大好きな優しい香り鼻を掠めたかと思えば、後ろから肩を支えられて。

私は、その場に倒れずに済んでいた。

「ね、寧衣くん?!」

「は、なに。彼女って!この人、姫茉の彼氏!?」

「さっき、一緒に来るのは友達って、」

「すっごいイケメンじゃん」

取り巻きのひとりがボソッとつぶやく。

さすがの彼女たちも寧衣くんのその綺麗な顔に固まっている。

「……そりゃどーも。けど、さっきのはいくら俺でも見逃さないよ?」

「へ、」

「次、浅海さんに手出したらタダじゃおかないから。女の子でも容赦しないよ?わかったら二度と浅海さんの前に現れないでね」

えっと。
この人は本当に、寧衣くん、なんだよね?

彼の口から聴いたことのない低い声に、彼女たちを見下すような目。

私の知ってる爽やかでかわいらしい最上寧衣くんじゃない……。