「これだと、いつもより浅海さんと目線が近くて、本当はずっとドキドキしてるんだけど」

「へ、」

「浅海さん、お茶でいい?」

「え、あ、うん」

「よし。じゃ、そこで座って待ってて」

寧衣くんは爽やかスマイルでそう言うと、急足で飲み物を買いに行ってしまった。

……寧衣くんって、ほんとすごいな。

ヒールの高い靴を履いて背伸びをしようとしたことで、寧衣くんに気を遣わせてしまったと反省していたけど、

そんなモヤモヤをあんなセリフで溶かしてくれるんだから。

『これだと、いつもより浅海さんと目線が近くて』

『本当はずっとドキドキしてるんだけど』

そんなこと言われちゃったら、これを履いて来てよかったって思っちゃうじゃん。

わからない……。
寧衣くんの気持ち。

彼はみんなに優しいんだって、女の子の扱いに慣れてるからああ言うふうにスマートにできちゃうんだって、

自分に言い聞かせるけれど。

心のどこかでは期待してしまっている自分がいて。

……どうしよう、私……どんどん寧衣くんのこと……。