「イルカ、泳いでる!」

「ほんとだっ」

イルカショーが始まるまでの間、水中で泳ぐ2匹のイルカを眺める。

俺と浅海さんの座る席は前から三列目。

実は、ここのイルカのパフォーマンスが、かなりお客さんをびしょ濡れにさせてしまうものらしくて。

水族館のホームページにも、アナウンスでも『前列の方はカッパ必須』と注意されているぐらい。

だから今、俺と浅海さんも、会場で売っていたビニールカッパを買って着ているんだけど。

正直、本当にここまで水がかかるのかと半信半疑。

まあ、カッパを着た浅海さんが可愛いからもし濡れなかったとしても全然いいんだけど。

いつもよりさらに小柄に見えると言うか、小動物感が増すと言うか。


抱きしめたくなる。

重症なのは自覚している。


「はーい!皆さんこんにちはー!」


浅海さんに見惚れていたら、舞台からトレーナーさんの声がして、


待ちに待ったイルカショーがスタートした。