「つ、次のところ行こっか、」
急に俺と目を合わせなくなった浅海さんが水槽から離れて歩き出そうとするので、慌ててその手を取る。
「もうちょっとだけ、」
「寧衣くん……」
本当に嫌なら、もっと嫌な顔をして欲しい。
戸惑いながらも、嫌じゃなそうな顔するから。
期待してしまうんだよ。
「浅海さん……」
小さく名前を呼んで、掴んだ手にほんの少し力を入れる。
この場所が、音が、照明が、空気が。
俺の気持ちを昂らせる。
さらに一歩彼女と距離を縮めて、目線を合わせると、バチっと音が聞こえたかのように、視線が交わって。
「あの、寧衣、くん……」
その声に名前を呼ばれるのが、好きでたまらなくて。
全部、俺だけのものならいいのにって──。
「わー!なにここめっちゃ綺麗〜!」
「……っ、!!」
突然聞こえた女性の声に、すぐに浅海さんから距離をとる。
声のした方を見たら大人のカップルが1組入ってきていた。
……あっぶな。
って。
チラッと浅海さんのことを横目で確認すれば、こっちにまで伝染しそうなぐらい真っ赤で。
ヤバい。
俺、今、浅海さんに何をしようと……。



