「はい、じゃあ撮りますよー!笑ってー!」
イルカのぬいぐるみを手に持ってこちらに合図を送る女性スタッフの明るい声に、
自然と顔が綻ぶ。
「あ、すみません、彼女さんもう少し真ん中の方に寄ってもらっていいですか?」
「……っ、え?!いや、わ、私は……」
カメラマンさんのセリフに、隣の浅海さんが真っ赤な顔をしながら口をパクパクさせている。
いいのに……否定しようとしなくて。
誤解されたままで、いいじゃん。
「おいで、浅海さん」
「へっ、」
彼女の細い手首を取って、自分の方へと軽く引き寄せれば、
浅海さんの柔軟剤の香りが鼻を掠めて。
「今日一日だけは、浅海さんと俺、恋人同士ってことで」
「えっ、」
カメラを見ながら小声で言えば、さらに彼女の耳が赤くなって。
その反応が、俺をクラッとさせる。
「はい、バッチリです。では撮りますねー!!」
陽気なスタッフがそう言ってすぐに、カメラのシャッターが切られた。



