「俺が早く着きすぎちゃったの。すっげぇ楽しみすぎて、家でじっとしてられなくて。浅海さんはちゃんと時間通りだよ。というか、15分早い」

「あっ、そうなんだ、良かった」

待ち合わせ時間を間違っていなかったという安堵と同時に、

寧衣くんも、今日を楽しみにしていて私よりも早く着いちゃったんだと思うと、

嬉しくてニヤけそうになる。

「ハハッ、ふたりして早めに着くって。なんなら待ち合わせ時間もっと早めにした方がよかったかな」

「ほんとだね。でもあと1時間早かったとしたらまだ水族館入れないよ?」

「けど、浅海さんとの時間は増えるでしょ?」

「へっ、」

寧衣くんは、きっとときめかせる天才だ。

「よし、じゃあさっそく行こっか!」

「う、うんっ」

返事をした瞬間、フッと空気が動いて。

「……今日の浅海さんも、かわいい」

耳元でそんな声が響いた。

「……っ?!」

寧衣くんったらほんと、不意打ちがすぎるよ!!

驚いて顔を上げれば、

満足そうな寧衣くんの笑顔にまたさらに鼓動が速くなって。

私は熱くなった耳元を抑えながら、彼の隣を歩き出した。