「ここ……」

「へー!ここが浅海さんのうちかー!綺麗だね。うちマンションだからな〜一戸建て憧れる」

「そうかな……」

『綺麗だね』
寧衣くんのそんな言葉にドキンとして。

私じゃなくておうちのことを言っているのはわかっているのに。

「浅海さんといると時間過ぎちゃうの速いな〜」

「……わ、私も、寧衣くんといると楽しくて、すごくあっという間」

「ふはっ、ありがとうっ」

はちみつ色の笑顔が、私の心をまた温める。

だからね、まだまだずっと一緒にいたいんだよ。

ここで踏み出せなかったら、私はずっと、弱くて、逃げてばかりなままな気がする。

せっかく、羽芽ちゃんが勇気をくれたのに。

「じゃあ、俺そろそろ。今日は本当にありがとうね。俺のわがままに付き合ってくれて。また学校で」

「え、あ、」

急がないと。

くるっと後ろを向いた寧衣くんの足が一歩歩き出す。


ダメ。


まだ、行かないで。


「寧衣くん!!」


私は、今まで出したことない大きな声で、その背中に向かって声をかけた。