満員電車から無事に降り、人混みから解放されて。

さっきまで、寧衣くんとすんごく距離が近くて心臓バクバクだったけど、

次なる緊張が私を襲う。

「人すごかったね」

「うん、そうだね、」

フワッと笑って声をかけてくれた寧衣くんに、少しだけそっけない返ししかできなくて。

でも、それも無理はないと思う。

リュックのポケットの中に入っている、水族館の招待券。

せっかく羽芽ちゃんがくれたんだから、早く寧衣くんを誘わないとなのに。

あと数分も経てば私の家についてしまって今度こそお別れだ。

なのに、なかなか言い出せない。

言わなきゃ。

そう思いながらも、もし断られたら、

そこから気まずくなってしまう空気をどうしようとかそんな心配が過ぎってしまって。

寧衣くんが隣を歩いていることにもドキドキしながらぐるぐる頭の中で考えていたら、

あっという間に、自分の家が見えてきてしまった。