「浅海さん、ちょっと」
「へっ……」
急に、手すりに捕まっていた手を寧衣くんに取られて、
スマートに動いた寧衣くんと私の位置が入れ替わる形になった。
私の身体は見事に、電車のドア横のスペースに収まる。
これだと、背中が預けられてさっきよりもうんと楽だ。
それに、寧衣くんが私のことを庇うような体勢でこちらを向いてくれて、
完全に私のテリトリーだけが守られている。
寧衣くんの優しい気遣いに胸がキュンとする。
「ありが、とう……」
「ううん。本当はもっと早くこうしたかったけど……向かいに男の人立ってたからさ、」
どうしよう。人混みのせいもあって、寧衣くんの呟いた声をうまく拾えない。
「ごめんね……寧衣くんっ。もう一回」
そう言って指で1を作ると。



