小悪魔王子に見つかりました


「まぁ、とにかく、ゴールデンウィーク、楽しんでよ!じゃ、私行くから!」

「あ、ちょ、羽芽ちゃん!」

羽芽ちゃんは、何かを企むようにニヤッと笑って私の肩を優しく叩いてから、

手を振ってあっという間に私に背中を向けていってしまった。

ど、どうしよう。

もらった水族館の招待券を見つめて固まる。

寧衣くんを誘うって……。

そりゃ、寧衣くんと一緒に水族館に行けたらすっごく嬉しいけど。


「浅海さんっ」

っ?!


温かい声が私を呼ぶのが聞こえて。

トクンと胸が跳ねる。

「寧衣くん……」

とたんに速くなる鼓動。

「一緒に帰ろう。送ってく」

「へっ……でも、私と寧衣くんの方向って、逆……だよね?」

寧衣くんが私を送ることになったら、来た道を戻ることになる。

そんなの申し訳ないよ。

「俺がまだ浅海さんといたいの。ダメ?」

そうやってこちらをジッと見たまま首を傾げた彼に、慌てて首を横に振る。

『まだ浅海さんといたい』

ずるい。そんなこと言うなんて。