「浅海さん、匂いフェチ?俺はねー」

「昴のフェチとか誰も聞いてないから。気持ち悪いな」

「羽芽、お前な!」

羽芽ちゃんと尾崎くんの会話にさらにみんなが笑って。

「バイト組、そろそろ行かないと本当にやばくない?」

「あっ!!」

寧衣くんの声でみんなが慌ててスマホの画面を見る。

「やばい!ほんとまじで楽しかった!ありがとう!!」

「またな」

「じゃあ今度こそ本当に解散!!」

バイトのある人たちが先に帰っていくのを、手を振りながら見送る。

あぁ、本当に終わっちゃうんだな……。

次々にキャンプ場を後にするみんなを見ながらしょんぼりする。

私も帰る、か。

「姫茉っ」

荷物を持ち直して、一歩歩こうとしたら、羽芽ちゃんに後ろから声をかけられた。

「これあげる」

「え、」

突然手渡されたそれをジッと見つめる。

水族館の招待券?

「羽芽ちゃん、これって……」

「バイトの先輩からもらったんだ」

「へ!あの、そんなもの、なんで私に……」

しかも、もらったのは2枚。
それって一体……。

「寧衣 誘って行ってあげて」

「え、ね、寧衣くん?!誘うって、なんで?!え、わ、私が?!」

思わず出てしまった大きな声。

慌てて口元を手で押さえながら、

離れたところで木野くんと話している寧衣くんの背中を見つめる。

聞かれて……ないよね?

「寧衣、まだ全然足りないって顔してるからさー」

「足りないって……」

何が足りないって話をしているの、羽芽ちゃん。