*
朝食を取った後、なんだかんだみんな帰るのが名残惜しくて、海で遊んだりしていたら、
あっという間にお昼すぎになってしまっていた。
午後からバイトがある人もいて、そろそろお開きにしようか、と片付けが始まって。
「じゃあ、解散!と言うことで!」
綺麗に炊事場の掃除が終わって、尾崎くんの声が響いた。
「今度は夏休みに、水着持って来ようなーー女子〜!」
という浜田くんの声に、羽芽ちゃんたちが「スケベ!」と騒いで、
解散というのに、まだまだ賑やかな声はやまない。
「あぁ〜帰りたくないな〜これからバイトだし〜姫茉癒しパワーチャージして〜」
羽芽ちゃんがシュンと目線を落としながら、後ろから抱きついてくる。
上品な色気のある匂いが私の鼻をくすぐって。
さらに空気を吸ってみる。
羽芽ちゃんの匂い、好きなんだ。
「姫茉、今私の匂い嗅いだでしょ」
「へ?!」
「クンクンしてた」
「だっ、いや、それはっ……!」
『匂いを嗅いでいた』ことを指摘されて、一気に顔に熱が集まる。
どうしよう。羽芽ちゃんにわかるぐらいあからさまに嗅いでたんだ、私。
無意識だった。恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。