あれほど輝かしく、青く澄んでいて、どこまでも行ける気がした夏。
そんな夏がもうすぐ終わることを悟っている彼女は、彼に別れを切り出す決意をします。
「わたしのことすきだった?」
「すきになれなかった」
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晩夏というひとつの季節柄を、ここまで繊細に儚く、それでいて美しく描けるものなのかと衝撃を受けました。柔らかく風情を伴った描写が素敵で、ひだまりのようなあたたかさを感じさせながら、言葉選びが巧みで世界観にのめり込みました。読後はあたたかさと切なさが相まって、この日々には戻りたいけれど絶対に戻れないのだと、真っ直ぐに突きつけられる余韻にずっと浸っていました。
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わたしたちは春夏秋冬を、この夏までを、確かに一緒に過ごしていた。
その傷も涙も含めてかけがえのない夏だったのだと思います。素敵な作品、ありがとうございました!