夏を殺して。



村上は知らなくていい。

全部全部わたしだけのものにして、全部全部わたししか知らないものにしてやるから。



こんな気持ちになるのも全部、今朝見たセミのせいって、できたらよかった。


かわいそうって思ってないくせにかわいそうって言うから。


本当は気持ち悪かったのにかわいそうって言ったら、いいヒトになれる気がしたから。


村上がしてくるであろう話も本当の気持ちでよかったねって言えると思ってた。




残酷だね、村上。


夏とおなじくらい残酷だね。


気づかないうちにたくさん殺してしまう夏みたいに、村上も殺してしまうんだね。



わたしの気持ちなんてあんたは知らないでしょって。

かわいそうだねって笑えたらどんなによかったか。


そんなことできないから、この夏がはやく死んで欲しい。


苦しくて、つらいこの気持ちもこの夏といっしょに死んでしまえばいいのに。


この気持ちをどうか殺して欲しい。


この夏が死んでしまえば、この気持ちだって死んでしまうはずだから。


残酷な村上、殺してよ。


この夏を、殺して。


End.